○リファンピシン(またはリファブチン)+エタンブトール+クラリスロマイシン(+ストレプトマイシンまたはカナマイシン)
2004年~2009年:発症、増悪、治療開始
2004年39歳の時にいつものように健康診断を受けました。後日、例年は結果が手紙で通知されるだけなのですが、今回は精密検査が必要という電話がかかってきました。すぐに病院を受診したところ「肺がんではないが非結核性抗酸菌症の疑いがある」と医師の話を聞き、初めて聞く病名に戸惑いましたし、当時は予後が良くない、治す薬がない、などと言われ、不安を持ちました。連日ネット検索をしましたが、情報も少ない状況でした。 こうした状況の中、A病院で気管支鏡検査等の結果、アビウム菌陽性(ガフキー8号)となり肺MAC(Mycobacterium avium complex)症と確定診断があったのが、2005年でしたが、当時は自覚症状がなかったため経過観察となり定期的にレントゲン検査や喀痰検査、血液検査をすることとなりました。 2007年42歳の時、体調を崩し咳・痰がひどく呼吸も苦しいことから予約外受診をして、クラリスロマイシンという抗菌薬を単剤で1日400mg/日飲み始めることとなりました。投薬により吐き気や下痢といった症状が続き、整腸剤と吐き気止めも併せて内服していました。7か月後の2008年2月には咳や痰は多少あったものの、レントゲンの結果、投薬効果が確認できたとして投薬終了と言われました。しかし、投薬終了に喜んだのも束の間、その5か月後の再診で数年分を数か月で悪化していると言われ、投薬再開となってしまいました。加えて、その半年後には「投薬に効果なし」とされクラリスロマイシンが倍量の800mg/日となりました。増量によって口中に苦みを感じるようにもなりました。なにより、再開や増量という展開に不安感が増しました。
クラリスロマイシンまたはアジスロマイシン、リファンピシン、エタンブトールの 3 剤の内
2009年~2010年:多剤併用療法への挑戦と副作用に苦しみ、転院
2009年3月、A病院の主治医の退職を機に紹介されたB大学病院で各種検査を実施した結果、病状が悪化していることから3剤(クラリスロマイシン・リファンピシン・エタンブトール)治療が必須であると診断を受けました。副作用の話も聞いていたため、迷いましたが家族とも相談の末、2009年7月には3剤治療を開始する決断をしました。しかし、投薬3週目、悪寒と発熱、起き上がれないほどの倦怠感が現れます。翌月、診察時に主治医に相談し「3剤治療が絶対に必要だが当面は代替薬で様子を見る」とされ、3剤治療は中止となりました。2010年5月、CT検査を実施し、既存の空洞は小さくなっているが、新たな空洞ができているとの指摘を受けました。「やはり3剤治療をするべきであり、それが嫌なら筋肉注射を週に2回通ってもらう」と言われてしまいました。このことから、大学病院はつらく厳しい治療を無理強いするところ、との印象を持ってしまいました。生活のために働かなくてはならないことを理解してもらえないと思い、その病院への受診をキャンセルし、以前の主治医がいるC病院を受診することにしました。その病院では「3剤治療は副作用が強い上、飲んでも必ず治る保証はないので辛いなら飲まなくて良い。クラリスロマイシンを中心にL-カルボシステインを追加しよう。」と言われて安心し、頼ってしまうことになりました。
肺非結核性抗酸菌(肺NTM)症特有の症状はありません。咳や痰をきっかけに見つかることもありますが、症状はなく偶然に検診の胸部レントゲンやCT検査で見つかることもあります。気管支に病変を作るので、血痰が出たり、病気が進行すると疲れやすさや体重減少がみられたりすることがあります。
肺Mycobacterium avium complex症治療薬の 薬物相互作用と適正使用
日本の診断基準では、症状がなくても、CT検査などの画像検査で非結核性抗酸菌によると考えられる変化があり、非結核性抗酸菌が痰やで採取した洗浄液などから培養検査で発育すれば、肺非結核性抗酸菌(肺NTM)症と診断できます。
2011年~2015年:改善しない症状に悩まされる~不信感を抱く
2011年の3月にまた主治医が退職し、後任の医師に変更になりましたが、クラリスロマイシンとL-カルボシステインという投薬内容に変更はありませんでした。その後、自覚症状を伝えても「肺MAC症の悪化ではない。前回とレントゲンに変化はない」と言われるだけでしたので、自分からは特に報告することはしなくなりました。血液検査はするものの、喀痰検査やCT検査も特になく、薬をもらうための通院という感じでした。しかし、単剤投与を再開して4年目の2014年7月、激しい咳こみと痰に悩まされ始めます。受診したところ、細菌感染かもしれないといわれ、スルタミシリントシル酸塩水和物を処方されました。その時は後から、インフルエンザ菌への感染であったことがわかり、投薬の効果で症状が改善しました。しかし最初の健診より10年が経ち、自覚症状は明らかに悪化しているのに診察には進展はなく、主治医への不安が強くなりました。そこで転院を希望したところ、「専門病院に転院したら強い薬を飲んでまた副作用が出ますよ。よく考えたほうがいい」と言われました。そう言われると気持ちが消極的になり、身内の手術などもあり、転院は保留となっていました。
クラリスロマイシンまたはアジスロマイシン+エタンブトール+リファンピシン
非結核性抗酸菌(nontuberculous mycobacteria:NTM)は、結核菌群とらい菌以外の抗酸菌の総称で、本邦の肺NTM症の9割がMycobacterium aviumとM. intracellulareの2菌種(一括してMycobacterium avium complex:MAC)によるもので、肺MAC症と呼ばれている。肺MAC症には、線維空洞(FC)型と結節・気管支拡張(NB)型がある。
(標準治療)
リファンピシン、エタンブトール、クラリスロマイシンの3剤併用連日療法で、必要に応じてストレプトマイシンあるいはカナマイシンの筋注を追加する(表)。空洞のないNB型で、週3回の間欠投与が行われることがある(重症は除く)。
投与期間は、英国胸部学会のガイドラインでは2年間の薬剤投与を推奨し、「排菌陰性化後約1年」に加え、半年から1年程度治療期間を延長することが日常診療で行われている。しかし、副作用を心配して自己判断で中断する患者もおり、副作用軽減対策として、米国では週3回の間欠療法が推奨されている。
(間欠投与の効果)
米国と韓国での後ろ向き研究では、間欠療法と連日療法の間で排菌陰性化率に統計学的有意差が認められないこと、間欠療法では明らかに副作用が少なくアドヒアランスが向上することが報告されている。さらに韓国において、初回治療が成功した肺MAC症の再発に対する連日療法と間欠療法の排菌陰性化率にも有意差を認めないことが報告された。日本では2022年2月現在、間欠療法と連日療法のランダム化前向き比較試験が進行中である。
非結核性抗酸菌(NTM)は、結核菌と似ている名前ですが、結核と異なり、結核と非結核性抗酸菌症は、経過や胸の画像検査で区別できる場合もありますが、厳密には菌の検査が必要です。非結核性抗酸菌症の診断がつくまでは、人から人に感染する可能性のある結核として対応する場合があります。
肺非結核性抗酸菌(肺NTM)症の原因となる非結核性抗酸菌の頻度は、日本では (マイコバクテリウム・アビウム)と (マイコバクテリウム・イントラセルラー)が約90%です。とは (略してMAC(マック)と呼びます)に含まれます。また、(マイコバクテリウム・カンサシ)が約4%、(マイコバクテリウム・アブセッサス)が約3%です。は、さらに(マッシリエンゼ)と、(アブセッサス)に分類されます。MACによる肺感染症を肺MAC症、による肺感染症を肺アブセッサス症と呼びます。日本では、肺MAC症と肺アブセッサス症が増加してきています。
クラリスロマイシン; エタンブトール; リファマイシン系(リファンピシンもしくはリファブチン)
2015年:喀血・転院
そうしてC病院でクラリスロマイシン単剤での療養を続けながら過ごしていた2015年8月、初めて喀血をしました。主治医からは「肺MAC症の悪化は見られないので重いものを持った瞬間に気管支に負荷がかかったことにより血管が切れたのだろう」と言われ2週間の安静を指示されました。その年の10月、肺NTM症専門病院の市民講座に参加し、講師の医師に相談したところ「現状の投薬では耐性化の危険がある。今の状態なら投薬する価値があるし、減感作療法で副作用の影響を考慮しながら投薬できる可能性がある」と言われ転院を決意しました。 主治医にその意思を伝えたところ「紹介状を書くのは構わないが専門の先生には怒られると思う。なぜならクラリスロマイシンの単剤投与はやってはいけないといわれているから」と言われて絶句しました。やってはいけないと知っていて単剤投与を長期間していたことを知り、言葉がでませんでした。勝手に大学病院を辞めたことは誤りだったことにこの時、気が付きました。
2016年~2017年:クラリスロマイシン耐性菌が発覚、多剤併用療法を開始
専門病院であるD病院に転院後、喀痰検査を実施した結果、クラリスロマイシン耐性アビウム菌と判明し、クラリスロマイシンを中止することになりました。減感作療法を実施するために入院し、抗アレルギー薬を服用しながらでしたがリファンピシン、エタンブトールを基礎とした多剤併用療法を開始することができました。それから2年間、同様の服薬内容で体調良好な日々を過ごすこととなりました。
クラリスロマイシン、リファンピシン、エタンブトールの 3 剤が使用されま
肺MAC症を完全に治癒に導く薬物療法は、現在のところ確立していません。ただし、比較的ゆっくりと進行する病気であり、ときに自然軽快することもあるため、軽症の時には経過観察のみを行うこともあります。痰・咳・血痰といった症状がある場合や、画像検査で病変が広く進んでいく場合には治療を行います。クラリスロマイシン(CAM)、 エタンブトール(EB)、リファンピシン(RFP)の3種の抗菌薬内服による多剤併用療法が標準治療になります。薬物治療は、少なくとも2年~3年(菌が培養されなくなってから1年間)続ける必要があります。病勢の強い方には、初期にストレプトマイシン(SM)またはカナマイシン(KM)の点滴・注射の併用を行うことや、難治性の場合にはアミカシン(AMK)の吸入療法を追加することもあります。病変が肺の一部分にとどまっている場合には外科手術を、しつこい血痰や喀血が続く場合には止血目的でカテーテル治療を行うことがあります。
クラリスロマイシンの 3 剤で治療を開始したが,重大な副作用を認めなかった.肺癌と非結核性抗酸菌症
薬による治療は、複数の抗菌薬(抗生物質)を同時に使います。非結核性抗酸菌(NTM)に効く薬は限られており、1年以上の長期にわたって薬を飲むことが必要です。
薬の治療を始めるかどうかは一律には決まっていません。肺非結核性抗酸菌(肺NTM)は、一般に長い経過をたどりますが、日常生活には支障がないまま、ゆるやかに進行していくことも多いです。治療をしなくても痰から菌が検出されなくなったり、何年もレントゲンの影が変化しなかったりする患者さんもいますが、年単位で少しずつ進行していく例が多いです。自覚症状が乏しいこともめずらしくありません。多くの場合は緊急に治療を開始する必要はないので、患者さんの基礎疾患などの背景と治療内容、自覚症状、副作用や定期的な画像や喀痰検査などの重要性を理解したうえで治療を開始します。治療に年齢制限はありませんが、高齢の患者さんも多いため、薬の副作用も考慮し、病状によっては治療をせずに経過観察する場合もあります。以下のような場合には治療開始を考慮します。
肺NTM症は、クラリスロマイシン、リファンピシン、エタンブトールを中心とする複数の抗
代表的な治療薬はクラリスロマイシン(またはアジスロマイシン)とエタンブトールで、この2種類の薬にリファンピシンを加えて3種類の薬で治療します。このうちクラリスロマイシン(またはアジスロマイシン)は治療に重要な薬です。飲み薬だけでは治療の効果が不十分な場合などにはストレプトマイシンの注射剤(筋肉注射)、アミカシンの点滴注射や後述する吸入薬(アリケイス®)を使用する場合があります。リファンピシンのかわりにリファブチンを用いることもあります。
クラリスロマイシン(CAM)を主薬とした抗結核薬との併用療法や、これらに抵抗.
非結核性抗酸菌とは、結核菌とライ菌以外の抗酸菌の総称であり、現在100菌種以上が発見されており、それらの菌種によって起こる感染症のことです。
は,リファンピシン,クラリスロマイシン,エタンブトールの3剤が使われる。 Mycobacterium kansasii(M
非結核性抗酸菌は自然環境中の水系・土壌中や家畜などの動物の体内、水道・貯水槽などの給水システムなどに広く生息しており、菌を含んだ埃や水滴を吸入することにより感染すると推定されています。国内でも20菌種を超える感染症が報告されています。そのうち7〜8割ぐらいはMAC(Mycobacterium-avium complex)と呼ばれる菌で占められています。
非結核性抗酸菌症治療薬の薬物相互作用と用法用量設定に関する研究
患者として感じる困難は、ガイドラインがあってもこれで治るとか、どの程度時間がかかるという明確な指標がないために常に不安の中にいるというところです。薬を飲んだ方がいいのか飲まない方がいいのか、副作用はどうなのか、服薬を継続できたとして効くのか効かないのか、それらはすべてやってみなければわからないということが多かったです。それに加えて、医師の中でも治療に消極的な方がいらっしゃったりなど、多くの不安材料や、わからないことが多く、患者としては治療に取り組むことを躊躇してしまうように感じました。 またNTMの治療の特徴としても、運良く薬が飲めて、陰性化してもその後1年間程度は服薬を継続しなければなりません。その間にまたどれかの菌が陽性化してしまう不安があります。これはまるで「あがりのない双六」をぐるぐる回っているような感覚を覚えました。 何年も大量の薬を飲むというのは体への負担や精神的なしんどさに加えて、金銭的な負担も大きいです。そのため、投薬を終了すると言われたら普通は喜ぶところです。しかしNTM患者にとってはそれが夢のような言葉であり、同時に、再度陽性化し振り出しに戻ってしまうかもしれない、それを言われたらどうしようという恐怖の言葉ともなり得ます。医療者の皆様には、こうした不安や両価的で複雑な患者の気持ちを理解して欲しいです。ずっと付き合っていかないといけない病気と思っていますが、治せる薬が出てくるまで頑張ろう、ということも患者同士で励まし合って日々を過ごしています。私たちの病気を知っていただき、応援していただけたらとても嬉しいです。よろしくお願いいたします。
慶應医師会市民公開講座資料②(肺非結核性抗酸菌症の薬と副作用)
非結核性抗酸菌(NTM)は、1)吸入による呼吸器系、2)水や食物を介する消化器系、3)傷ついた皮膚や創部から、人に感染し、肺、リンパ節、皮膚、骨・関節などに病変をつくります。最も多い感染臓器は肺で、非結核性抗酸菌症(NTM)による肺の感染症を肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)と呼んでいます。かつてはの人やもともと肺に病気をもつ人の免疫力が低下した場合に起こりやすいといわれていましたが、近年は、肺に病気がなく免疫力が正常な人にも増加していると報告されています。
[DOC] 抗酸菌症(結核および非結核性抗酸菌症)の治療薬と副作用
治療期間が1年以上必要なことが多いですが、薬に対する副作用や効き目が患者さんによって違うので、治療期間も異なります。当院には日本結核・非結核性抗酸菌症学会の結核・抗酸菌症指導医が在籍しており、クロファジミン(内服薬)を含めた先進的な治療を提供しています。
DIクイズ3:(A) 抗結核薬を服用する結核以外の疾患:日経DI
<治療薬の副作用・注意点>
非結核性抗酸菌症や気管支拡張症の治療で使用されることの多い内服薬・点滴薬
肺MAC症は主にどのような薬で治療しますか?副作用はありますか?
<基本の治療法>
・肺マック症
クラリスロマイシンまたはアジスロマイシン、リファンピシン、エタンブトールの3剤の内服薬に加えて、病状の程度や症状の強い方にはアミカシン(アミノグリコシド)の点滴を行っています。
・肺アブセッサス症
有効な内服薬が少ないため、数種類の内服薬に加えて、アミカシン、イミペネム/シラスタチンなどの点滴治療を行います。
最近、遺伝子解析などにより、より細かくⅰ)アブセッサス・マシリエンゼ、ⅱ)アブセッサス・アブセッサス、ⅲ)アブセッサス・ボレッティの3種類に分類できるようになってきています。ⅰ)アブセッサス・マシリエンゼでは通常クラリスロマイシンが有効であるのに対して、ⅱ)アブセッサス・アブセッサス、ⅲ)アブセッサス・ボレッティではクラリスロマイシンが効きにくいことが多いため、退院後も点滴抗菌薬を継続することがあります。
胃腸障害(下痢、腹痛、吐き気); 肝機能障害 ; リファンピシン
病気の形状、広がり、痰からの菌の程度などによっては、手術が選択肢になることがあります。日本結核・非結核性抗酸菌症学会から手術に関する考え方が示されていますが、経験豊富な外科医師と相談し、患者さんの年齢、基礎疾患、全身状態、肺機能(肺の余力)、患者さんの希望などを総合的に判断したうえで、手術を行うか検討します。